発着空港と時間帯から分析する日系2社のインド路線戦略

目まぐるしく変化する最近のJALとANAのインド路線改革。

先月末からANAのチェンナイ便就航、そして来年3月からJALのベンガルール便就航に続き、先日更に新たな発表がありました。

JAL、ANA両社とも、2020年3月末からデリー路線を成田から羽田発着へ移行する事が決定。同時に、現地深夜発着だったANAのデリー線が便利な夕方発着へ変更。

羽田空港チェックインロビー
羽田空港国際線ターミナル内

何故今までANAのデリー線は不便な時間帯の発着だったのか。

何故ムンバイやチェンナイ路線は便利な発着時間なのか。

また、来年就航されるJALのベンガルール便は現地発着が不便な早朝で、日本人のビジネスマンにとってはかなり苦痛の時間帯。何故そんなスケジュールなのか。

それには、発着時間帯からそれぞれの路線によって異なる戦略が見えてきます。

ポイント一:羽田空港の国際線発着便の増枠によってANAの成田ハブが崩壊

まずは両社のデリー路線から分析していきましょう。この2社は異なる目的で現行の成田⇔デリー線を開設したと思われます。

JAL:日本が出発の拠点、もしくは目的地の乗客対象
ANA:日本(成田)は中継地として、北米が出発の拠点、もしくは目的地の対象

JALの場合、デリーから成田で乗継いで北米へ行く際は、4時間~10時間のトランジット時間があり、反対にデリーへ向かう際には必ず成田で1泊が必要。その代わり、インド現地の発着が夕方から早めの夜にかけてと日本⇔デリー間のみを利用する際にはとても便利です。

JAL787デリー空港
デリー空港に停泊するJAL787機

対するANAは、現在のスケジュールだとデリー⇔北米路線は往復とも成田での乗継時間が良く、2~3時間前後でニューヨーク、シカゴ、ワシントンDC、ヒューストン、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンノゼ、バンクーバーに乗継ができます。それには、どうしてもデリー発着が深夜になってしまうのです。

インド路線:ANA787機
ANAの787機

しかし、先日発表されたANAの北米路線が大幅に成田から羽田へ移行される事になり、成田便は4路線が運休、1路線が減便となる事が決定。そのため、成田がハブとしての需要が衰え、JALの様に日本が出発の拠点、もしくは目的地の乗客を対象にしなければいけません。

それには、JAL同様にデリー発着を便利な発着時刻に変更する必要があります。

ポイント二:羽田発着にする事でデリー路線の需要拡大

ANA、JALそれぞれインド路線に対し、昼間の羽田発着を0.5枠配分されました。これは、出発、もしくは到着のどちらかを22:00~06:55以外の時間帯で発着が許される事です。これに伴い、両社とも現行の成田発着を運休し、羽田発着へ移行します。

新しいスケジュールは以下の通り(2020年3月29日~):

<JAL>
毎日 JL 39 羽田(10:55発)→デリー(17:00着) 787-9(SS9II)
毎日 JL 30 デリー(19:30発)→羽田(翌06:55着) 787-9(SS9II)

<ANA>
毎日 NH 837 羽田(10:10発)→デリー(16:25着) 787-9
毎日 NH 838 デリー(18:30発)→羽田(翌05:55着) 787-9

JALは現行のスケジュールとほぼ変更無しで機材は一緒。

ANAは羽田朝発でデリー夕方発着で機材も現行の787-8から-9へと大型化されます。時間帯変更によって、日本人ビジネスマンの需要をJALと競い合う形になり、今までのビジネスモデルが北米⇔デリーから日本⇔デリー対象になりそうです。

ANA787-9ビジネスクラス
ANA787-9機のビジネスクラス

ポイント三:ANAのムンバイとチェンナイ路線は日本人ビジネスマン向け

他社との競争が無いANAのムンバイとチェンナイ路線は現地発着が夕方で明らかに日本人ビジネスマン向け。

チェンナイ中央駅
植民地時代に建てられたチェンナイ・セントラル駅

ポイント四:JALのベンガルール路線はインド人IT企業社員対象?

2020年3月29日に開設されるJALの成田⇔ベンガルール(バンガロール)路線はまず現地発着時間が悪い!

毎日 JL 753 成田(18:10発)→ベンガルール(翌00:30着) 787-8(SS8)
毎日 JL 754 ベンガルール(02:45発)→成田(14:15着) 787-8(SS8)

ベンガルール郊外にはトヨタ自動車の現地法人の本社があり、日本人からは「トヨタ城下町」とも呼ばれる程、トヨタ関連者が多く駐在する街として知られています。

ただし、デリー首都圏と比べると日本人人口は明らかに少なく、日系企業数も限られるので日本人ビジネスマンを対象にするとそれほど需要は見られないと想定します。しかも強気の毎日運航(同じぐらいの日系企業数が集まるチェンナイへはANAが週3便のみの運航)。

これには、リスク回避のためにJALは日本路線の乗客だけではなく、前から需要が高いベンガルール⇔サンフランシスコの乗客も対象としているため。

ベンガルールは「インドのシリコンバレー」とも呼ばれ、世界中のIT企業がここに拠点を置いた事によって街が発展していきました。一時は倒産してしまったインドのキングフィッシャー航空がベンガルール⇔サンフランシスコがノンストップ便を開設予定だったぐらいに、本場のシリコンバレーと結びつきが強い。ルフトハンザが「バンガロールエキスプレス」とも呼ばれるぐらい、両都市間の乗客をフランクフルト経由で運び、ベンガルールへはジャンボ機747がここ数年間毎日運航しています。

ベンガルール市内
ベンガルール中心部の交差点

JALの成田⇔ベンガルール便開設と同じ日の3月29日に、成田⇔サンフランシスコ路線を復活。サンフランシスコへは既に羽田から運航しているので、この新しい路線は明らかにベンガルール便乗客のために就航する様なもの。スケジュールも正にそれに合わせるように。

毎日 JL 58 成田(18:10発)→サンフランシスコ(11:10着) 787-8(SS8)
毎日 JL 57 サンフランシスコ(13:35発)→成田(翌16:45着) 787-8(SS8)

成田での乗継は東回りは3時間55分、西回りは1時間25分と丁度良い。地理的にも、フランクフルトを経由するよりも1割短くなる。

実際来年に開設された後、日本路線かサンフランシスコ路線、どちらの方が需要が高いか気になるところです。

JAL787ビジネスクラス
JAL787-8機のビジネスクラス

路線拡大が著しい日系二社

〇ボーイング787等の中・長距離路線用機材の小型化に伴い、世界中の中規模都市へ気軽に就航できる様になった
〇訪日旅行客がうなぎのぼりで増加
〇羽田空港の国際線増枠

これらの背景がある事から、日系二社の路線拡大は著しいです。チェンナイやベンガルールへ日本から直行便が開設される等以前は考えられなかった。インドの経済成長が続く限り、これからも日本からインド地方都市への開設が新たにされるかもしれません。

「発着空港と時間帯から分析する日系2社のインド路線戦略」に2件のコメントがあります

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